【完】さつきあめ〜2nd〜
由真は無理やりわたしの顔にティッシュを押し付けて、ぐしゃぐしゃと顔をそれでなすりつけた。
「好きになったらいけない人なんかいるもんか」
「でも…やっぱりダメなんです…」
「どうしてよ。何で今更頑なに自分の気持ちに嘘をつかなくちゃいけないのよ」
朝日をずっと憎むことで、わたしは七色グループで立っていた気がした。
全てを手にした王様に復讐をするために生きてきた。そこにはいつも大切だった思い出があった。
薄紅の色を綺麗だねって見上げながら、照れ臭そうに朝日を好きだと言った彼女を
彼女を失った時に、まるで泣いているように降っていた天気雨も
けれど朝日と出会って、全てを手にして笑っている王様は、わたしが思っているよりずっと孤独で、寂しい人だった。
思っていた通り傲慢で、自分勝手で、思っていたよりずっと優しくて、人を大切にする人だった。
自分が捨てた物に対して、きちんと傷ついていた。
「初めて言うんですけど」
「うん…」
「あたし…小さな頃から姉妹みたいに育ってきた人がいて…」
わたしは生まれた町でずっと孤独だった。
七色グループで美優たちに出会うまで、友達らしい友達もいなくて
少しだけ裕福な家庭でも自分の居場所が見つけられなくて、母親に言われた通りに習い事や勉強ばかりしていて、自分が何をやりたいとか、何が好きかなんて自分の意志はどこにもなかったかのように思う。
そんな生活をいつも窮屈に感じていた。それを自分で変えようともせずに。