【完】さつきあめ〜2nd〜
「美月ちゃん、忙しそうで寂しいですね」
「そうですね。あ、何か好きな物を飲んでください」
話した事は初めて。
けれど想像していた以上にその人は優しく言葉を掛けてくれて、わたしに気を使ってくれるのがわかる。
「ありがとうございます。じゃあビールを一杯だけいただきますね」
乾杯をした後も、佐竹は相変わらず美月を目で追っていた。
けれど、こちらから話をかければ、きちんと答えてくれる丁寧な人だった。
「美月ちゃんの事本当に好きなんですね。可愛いですもんね」
「いやぁ~…本当にあんなに綺麗な人が、僕なんか好きって言ってくれるなんて…
何か夢を見ているみたいで」
「あ…あぁ…いやいや佐竹さんも素敵な人ですから、美月ちゃんが好きになって当然っていうか…」
内心焦っていた。
佐竹はわたしが思っているよりずっと純粋な人で
本当はキャバクラ遊びなんてするような人ではなかったから。
「美月ちゃん、親の借金を返すためにこの仕事をしてるんですよね」
「あぁ…そうなんですかぁ?あたしあんまり話した事がなくて…知らなかった。
苦労してるんですねぇ…」
どれだけ話を作ってるのだろうか。佐竹の問いかけに当り障りのない返事をするのが精いっぱいだった。