【完】さつきあめ〜2nd〜

「愛ちゃん!もうやめて!るなならだいじょうぶだから!
レイさんの言う通りだよ…。指名を選ぶのはお客さんの自由だし…
美月は別に悪くないよ…」

今にも泣きだしそうなるなの顔。
るなは愛と美月の後ろに隠れてしまうような気の弱い女の子だった。
けれどヘルプの席で嫌な顔ひとつせずに、礼儀の正しい女の子だった。
そして愛も愛で、気は強いけれど、仲間想いの優しい子だった。わたしの前でだって、美月をフォローしていた。

けれど美月は……。

「うっさいなー。指名とったとからとられたとかどうでもいいでしょ?!
そんなに金が欲しいなら、指名変えの分あたしが金払えばいいんだろ?!」

そう言って、財布から無造作にお金を取り出して、るなに向かって投げた。
ひらりひらりと1万円札が何枚が天井に舞って、音も立てずに床にゆっくりと落ちていった。

わたしたちは唖然としてその様子を見ていて、愛は明らかに怒りをあらわにして、その後ろでるなが今にも泣き出しそうな顔をした。

愛と美月の間にいたレイは無表情で床に散らばったお金を拾い集めて、それを美月の胸へ押し付けた。

「確かに指名は自由だよ。結果がすべての世界かもしれない。
でもひとりで仕事してるんじゃない。誰かの助けがないと成り立たない仕事だよ。
義理や人情だって大切だし、自分がお客さんを大切に思ってないとそのうち痛い目見るよ」

いつもはふわっとして喋るレイが、無表情のまま早口で美月に言った。
美月は押し付けられたお金を払いのけ、睨むようにレイを見下ろした。

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