【完】さつきあめ〜2nd〜
「どうして美月ちゃんは宮沢さんを……」
「あたしの方がずっとずっと宮沢さんの事を理解してあげられる!
さくらさんなんかよりずっと…!
あたし、宮沢さんの飲みに行くバーで偶然会って、七色グループのオーナーだって知らなかったけど、話を聞いたらあたしの感じてた孤独と同じものを宮沢さんも感じてた。
それにあたし、今月の宮沢さんの誕生日も一緒に過ごす約束してるんですよ?」
「え………」
「宮沢さんはもうさくらさんの事なんて何とも思ってないんですから、いつまでも付きまとうような真似はやめてくださいね!!」
掴んだ腕を振り払い、美月はわたしを振り切ってお店から出て行った。
さっきの言葉が、脳裏をずっとめぐっている。
1年前の8月。
朝日の誕生日。去年は一緒に過ごしていた。
涼がいて、トリガーで、皆で笑っていた。
わたしの用意したケーキを驚くほど喜んでくれて、子供みたいに笑っていた。
もう側にはいてくれない。
今年の誕生日は、美月と過ごす約束をしている。
更衣室に戻ったら、いつの間にかるなと愛はいなくなっていて、レイや他のキャストが話しながら着替えていた。
「すごかったね~、美月」
「嫌な奴だとは思ったけど、あそこまでとはね。
でも聞いた?宮沢さんの新しい彼女って噂あるから、会社も首にも出来ないんじゃないかって」
噂なんて信じてない、嘘ばかりの世界だったから。
でもその噂が事実であれ、嘘であれ、心がすり減っていくのを感じていた。