【完】さつきあめ〜2nd〜

「さくらちゃん!美月どうだった?」

「ん~…なんか話聞く気もない感じだったかな…」

「そっかー。酷かったもんねぇ。なんか愛とるなは由真ママが連れて行ったよぉ~…」

「そっか…、2人の事は由真さんに任せておけばだいじょうぶだと思うよ…」

人の気持ちは変わっていく。いい意味でも、悪い意味でも。そこに留めておくことなんて出来ない。
変わりゆく人の気持ちを前にして、何も言えずに立ち尽くす事ばかり。だって文句の言いようもないじゃないか。わたしの気持ちだって変わっていったから。自分は変わって、周りに変わらないでと言うのは、ただのわがままだ。
朝日が誕生日を誰と過ごそうと、誰を抱こうが、誰を愛そうと、傷つかないと決めたのに。

’宮沢さんの誕生日一緒に過ごす約束してるんですよ?!’

’宮沢さんの新しい彼女って噂あるから’

「飲みすぎですよ」

お店を出てから、ZEROに足がいつの間にか向いていた。
3杯ほどカクテルを飲んだ後、マスターは困ったように笑って、わたしの前にお茶を差し出した。

「いいんですよ、お酒ください」

「ダメです。今日はお酒のリキュールが全部切れました」

「バーのくせに」

「今日、今の時間だけはカフェZEROに改名です。
僕に1杯付き合ってくださいな」

そう言ったマスターの手に、お揃いのお茶の入ったグラス。
わたしを見つめる優し気なマスターが、グラスに口をつける。

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