【完】さつきあめ〜2nd〜
「ホスト?!」
「あ、レイさんも指名入ってましたよ」
頭の中にはてなマークが浮かぶ。
ホストに知り合いなんかいない。レイにたまに連れられるホストでも人見知り全開なわたしは、連絡先さえ交換しようとはしなかった。
もしかしてレイの知り合いのホストで、わたしにも指名を入れてくれたのかもしれない。
そう思いながらVIPの扉を開くと、そこには見覚えのある顔がいた。
数日前の光景が蘇る。
「あ!さくらちゃん!!」
わたしの名前を叫んだのは、あのラウンジでナンパをしてきた男だった。
そして隣には、朝日の知り合いだと言っていた、拓也という男の姿。
「あ~!!雅くん~、レイの事指名って言ったのに~本当はさくら目当てなんじゃーん!!」
テーブルの上には派手なフルーツの盛り合わせと、高級なシャンパンが開けられていた。
レイにそう言われると、雅というナンパしてきた男は「いやいやマジでレイちゃんがタイプだよ~!」とレイの肩を馴れ馴れしく引き寄せる。レイもまんざらじゃないような顔をした。
全然状況が掴めない。
頭の中で整理しようとしても、どうして彼らがわたしを指名でお店にやってきたのか、全然分からなかった。
「あの………」
「突然びっくりさせちゃってごめんね。雅がどうしてもお店に来たいって言うからさ。
自己紹介遅れちゃってごめんね、俺、一応こういうものです」
そう言って、隣に座った拓也がおもむろに名刺を渡してきた。
真っ黒の名刺には、クラブ・SKYと書かれていて、一条拓也という名前の上に「代表補佐」と肩書が小さく書かれていた。
裏を見て見ると、あの日朝日が口にしたRUEグループと書かれていて、系列店が何店舗かのっていた。