【完】さつきあめ〜2nd〜

こいつ……。分かってて言ってる。
わたしは涼に満面の笑みを浮かべて返した。

「きっと物凄くいい女なんだと思うよ」

「げぇ、気持ちわる」

「うざいなぁ~!!!早く綾乃ちゃんと仲直りしなよーーー!!!」

「ほんっっと女ってめんどくせ!」

久しぶりに涼と話すとやっぱり楽しい。
初めて出来た男友達は、誰よりも気が合って、一緒にいて楽だった。
こんな風に、朝日とも接することが出来たらいいのに……。
でも1年前までは、こうやって涼と朝日と一緒に過ごす日々が当たり前だったんだ。
一緒に朝日の誕生日を祝ったり、ご飯を食べたり、家に行って、皆で遊んだり、さ。
あの当たり前だった日々が、いまはどんなに願っても手が届かないなんて、なんて皮肉な話だろう。

「そういえば」

涼はお酒を数杯飲んだ後、まるで今思い出したかのように口を開く。

「ん?」

「もう少しで誕生日だな」

いつ切り出そうか悩んでいたはず。
そんな小さな優しさに、綾乃は惚れたんじゃないかなと思うくらい涼は空気の読める男だった。口は悪いし、不愛想だけど、いいやつだなって思う。
涼なら今日会ったホストの雅や拓也より全然容姿だっていいし、こんな小さなお店じゃなくて、本格的にホストをやっても人気が出るのだろう。
女の機嫌を取るなんて柄じゃねぇよ、って笑いそうだけど、本当は心の優しい人だ。今もわたしに気を使って、言葉を選んで話している。

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