【完】さつきあめ〜2nd〜
「だね…」
「去年は楽しかったな。
お前と俺の仲を疑って、俺にずっと悪態をついてくるおっさんが本当に面白くて
ついついからかいたくなっちゃうんだよな」
涼は思い出したように、心底楽しそうに笑う。
うん…あの時は本当に楽しかった。
「パンダのケーキを物凄い喜んでくれて」
「あぁ、あれは傑作だったな。
俺がおっさんの立場だったら、馬鹿にされてるって怒ってるよ。
でもあの時のおっさんは子供が玩具を与えられるように目をキラキラさせてさ。俺あん時思ったね、この人すげー純粋な人なんじゃねって」
わたしも思った。
こんな大きなケーキをもらうのは初めてなんだって言って、まるで宝物のように携帯で何度も写真を撮っていたっけ。
無邪気な子供みたいにはしゃいで、あの時初めて朝日の寂しさに触れた。
「お前とおっさんと過ごす時間は、案外楽しかった」
「あたしも……」
「なぁ!今年もおっさんの誕生日でもしねぇ?
綾乃も呼んでさ。
妹には激甘だから、喜ぶだろ。またパンダの立体的なケーキ用意して、皆でハッピーバースデー歌うの」
ねぇ、またそんな日が来たら、どれだけ嬉しいんだろう。