【完】さつきあめ〜2nd〜
「うん…でも南さんと話すのはやっぱり怖いかな…。
光の事で恨まれてると思うし…」
「意地悪なところもあるやつだけど、恨んでるとかそんなんじゃないっぽいぞ。
あいつもあいつなりに今はダイヤモンドの顔として頑張ってるしさ」
「はぁ~…それでもだよ…。トリガーに来るの控えようかなぁ…。
でも、南さんの話っていったい何なんだろう…」
まぁ光の事だろうとは思うけど。
「さぁね」
知ってか知らずか光はそれ以上話そうとはしなかったし、わたしも何も言わなかった。
トリガーから帰ってきて、涼の言葉の意味を考える。
でもいくら考えてみても、わたしの中にだって汚い感情は沢山あるし、朝日の愛を素直に受け取らなかったのもわたしで、光を最後まで信じてあげられなかったのも、まぎれもないわたし自身だったんだ。
ベランダに出て、8月の生暖かい風を体に感じる。
もうこのマンションからネオンをひとりで見ることにはすっかり慣れてしまったけれど、切なくなる気持ちはどこまでも消えてくれそうにない。
朝日の誕生日。
涼に言われたからじゃなくて、またケーキ届けようと思った。
朝日が笑ってくれるくらいの、小さな子供が喜ぶケーキを。そんな小さな勇気を少し持てたら、朝日はまたわたしに笑いかけてくれるかな?
夢のような事を、ネオンがきらきらと輝く夢のような街並みを見下ろしながら願う事しか出来なかったあの頃。
傷ついても、嬉しい日でも変わらずにわたしの目の前を照らすネオンを真っ直ぐに見つめて、ゆっくりと目を閉じた。