【完】さつきあめ〜2nd〜
⑪
美月がお店を無断欠勤して2週間経とうとした時だった。
それは前触れもなく、突然に。
ホストの拓也からラインが入っていて、美月そろそろ出勤すると思うよー。この間お店に来て言ってたし、と。
拓也の言葉に疑心暗鬼だったが、彼の言う通り、美月は突然お店に出勤してきた。
出勤してきた美月は悪びれる事なく、沢村と笑って話をしていた。
「愛ちゃん、るなちゃん、美月ちゃん出勤してきたんだね!」
更衣室でふたりに会って、そう告げると「あー…」とふたりは気のない返事をした。
「良かったです。…とりあえず出勤してくれて」
「あたしとるなにもごめんねって一応謝ってきてはいるんすけど
美月ってああいう奴だから、問題起こしてケロッと戻ってきたりするんすよね~…。なんか逆にさくらさんに迷惑かけたみたいで申し訳ないっす!」
「とりあえず戻って来てくれて良かったよ。思ってたより全然元気そうだし」
ふたりとそんな話をしているうちに美月が更衣室へやってきた。
「おはよぉございまぁーす」
無断欠勤なんてなんのその、まるで何も気にしていない表情を浮かべ、美月は上機嫌だった。
「美月ちゃん、休んでる間に佐竹さん来ててすごく美月ちゃんの事心配してたよ?
ちゃんと連絡した?」
わたしがそう聞くと、美月はいつも不愛想なのにわたしへとにこりと笑顔を向けた。
何故かそれが逆に怖かった。