【完】さつきあめ〜2nd〜

「さくらちゃん……?」

拓也と話をしていると、わたしの名前を呼ぶ人の声に振り返る。
暗くて、よく見えない。ちかちかと点滅する電灯の中で、スタイルの良い、髪の長い女性のシルエット。
ホストに案内されて席に向かう途中らしき女性はの顔が、はっきりと映し出されて、鼓動が速くなるのを感じた。

「…南さん……」

1回しか会った事はない。
けれど忘れられるわけもない。
あの日初めて人を好きになって、絶望した。
光に会いに行った夜に、光の車で一緒に帰って来た人。

「何、南知り合い?」

隣にいたホストは、店前の電光パネルの中心にいた人で
身長の高い、SKYの中でも目立って綺麗な顔をしている男の人だった。その人の面影に、光を見る。

「ええ。知り合い!まさかさくらちゃんとこんなところで会えるとは思わなかった!」

「なんだよ、南こんなところって、失礼だな」

「あはは、ごめーん!でも本当に嬉しい!こんな偶然ってあるのね!!ねぇ、相席してもだいじょぶ?!」

「え?!」

「連れの女の子と雅くんと拓也くんが良ければだけれど………」

いや、それは無理です。そう言おうとしたけれど、すっかり酔っぱらっているレイと雅は「いいよいいよー」と軽く返事をする。
わたしの横にいた拓也だけが小さく「だいじょうぶ?」と囁いた。

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