【完】さつきあめ〜2nd〜
「おい、南やめろって。迷惑そうじゃん」

「え~…いいじゃん。ね!さくらちゃんだめ?!さくらちゃんに話したい事があったんだけど!」

強引なタイプで、気が強いのは知っていた。
でもここまでぐいぐい来られると、だめですとは言えなくて
俯いたまま「いいです…」と答えてしまった。こういう時はっきりと嫌だと意思表示出来ない自分にため息が出る。
光の元カノとなんて、今更話す事なんてないのに。それにあの日南は明らかにわたしに敵意を向けてきた。

「ごめんねー、南強引で。
拓也と雅もすまんね」

そう言って、SKYのナンバー1は申し訳なさそうにわたしたちに謝って、同じソファーに座る。
雅とレイは余り気にしない様子で、拓也は心配そうにわたしを見つめていたけれど、すぐに呼ばれて、違う卓に行ってしまう。代わりにヘルプのホストがやってきて「うわー豪華なテーブルっすねぇ~」と呑気に言っていた。

「何かマジでごめんね。ここのテーブルの伝票わたしにつけといていいから
蓮も何か好きなの頼んで」

蓮、と呼ばれるSKYのナンバー1ホストは「ありがと!」と軽く言って、普通に高そうなシャンパンを注文した。
そして南の横に座って、偉そうに煙草をふかす。
嫌いだな、とすぐに思った。レイに連れられて何回かホストクラブに来た事がある。レイが好んで指名をしていたのはそこまで売れていない腰の低い新人ホストが多かったのだが、フリーで入るわたしには様々なホストがつけられた。
その中でも、俺様系のホストは好きになれなかった。元々偉そうで、ぐいぐい来るタイプの男が苦手なんだと思う。それでも朝日を好きっていうのは少し矛盾している気がするんだけど。

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