【完】さつきあめ〜2nd〜
それに南とこの場で話すのは抵抗があった。
レイも居たからだ。南はきっとわたしと光の話をしたいに違いないのだ。それをレイには聞かれたくなかった。
幸いな事にレイはかなり酔っぱらっていたし、雅とふたりだけの世界を作っていたので、こちらには無関心なように見えた。
「さくらちゃん…久しぶりね……」
「…そうですね」
南は好戦的な態度ではなく
初めて出会った時のような嫌な感じはしなかったけれど、それが逆にわたしには怖かった。
会った時と変わらず整った顔で、抜群のスタイルは相変わらずだけど、あの頃の毒気が少し取れたような気がする。
けれど、光の経営するダイヤモンドグループを代表するナンバー1だった。
「あの時はごめんね」
「え?」
だから、謝られるなんて意外で、何か企んでいるのではないかと疑ってしまう。
「あたし、あの時は嫌な女だったね」
昔を懐かしむようにそう言った南の瞳は、どこか穏やかだった。
「そんな事ありません……」
そんなの嘘。
あの時のわたしは傷ついていたし、光も憎んで、光を奪っていったこの人さえも憎かったし、悔しかった。
それを押し隠すように笑ってみせた。