【完】さつきあめ〜2nd〜

綾乃とお店で数10分悩んだ結果
深い藍色の財布にした。そこまで値段は高くなかったけれど、深い夜の空のような色の財布は朝日によく似合う気がしたんだ。
昔光は水色が似合うと言った事がある。
光はまっさらな空の色がよく似合う人で、朝日は深い夜の空が似合う人だった。
どこまでも対称的なふたりだったけれど、それさえも、わたし自身が自分に見せた幻想だったのではないか、と近頃思う。

プレゼントを選び終えた後、綾乃と近くにあったカフェに入った。

「ふぅ~…あっつー…」

「綾乃ちゃんありがとうね!!
プレゼントって本当にむずかしくって!」

「全然。誕生日ってキャバ嬢やってるからすっごく大切にされがちなイベントだけど…実はあたしはあんまり興味なくて
てか小さい頃からよくテレビとかで見る誕生日ってのを経験した事がないからあんまり分かんないや
だからさくらのプレゼント選び案外楽しいわよ」

朝日も言っていた。誕生日を家族に祝われた事がないって。
綾乃も朝日と同じ家で育った。けれど朝日の誕生日が祝われなかったのは、朝日が母親の違う子供だとばかり思っていた。
けれど朝日や綾乃の家では、元々誕生日を祝う風習がないように思えた。
そう考えれば、光もそうなのだ。

「綾乃ちゃんちでは誕生日パーティーとかやらないの?」

わたしの問いかけに、綾乃は目をぱちくりと瞬かせた。

「逆にさくらんちは誕生日パーティーなんてものがあるの?」

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