【完】さつきあめ〜2nd〜

嬉しかった、と言った時の綾乃はすごく優しい顔をしていた。
母親と父親という役割が上手く機能していなかった家庭の中で
綾乃にとって、朝日と光は特別なものだった。もちろんふたりにとっても…。

綾乃が特別ならば、朝日にとって光も、光にとって朝日も、絶対に特別で、大切なものなのだと思う。

「さって、そろそろ行こうか。
さくらんちにあるケーキ取りにいかないとね」

「うんうん、すごく可愛いケーキなんだから」

「知ってる、涼から写真見せてもらった。
あさひくんおたんじょうびおめでとうは中々ウケたわ。きっと朝日、すごく喜んでくれると思うよ」

「ならいいけど…」

「なんだかんだいってプレゼントって値段とかじゃないよね。
その人が自分の為にどれだけ悩んでくれたかって事だと思う」

綾乃と一緒に自宅に戻って、ケーキを持ってきて、それを見て綾乃は「傑作ね」と笑った。
それから涼と待ち合わせをして、涼は両手にピザやらチキンの大荷物を抱えて「俺に押し付けやがって、重かったんだからな」と会った瞬間に悪態を突かれた。
悪態をつきながらも全部用意してくれる涼は相当優しいのだと思うが。

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