【完】さつきあめ〜2nd〜
親には大学に行くことを義務付けられていた。
それでもわたしはその時2度目の親への反抗をした。
わたしより一足先に上京していたさーちゃん。わたしはずっと彼女の姿を追いかけていて、大学には進学せずに、上京する事を決めていた。
さーちゃんから聞いていた都会の話。
こんな自分でも、この町から出て行けば、望んでいた自由を手にする事が出来ると思っていた。
けれど、わたしの上京を待たずに、彼女は交通事故であっけなく帰らぬ人となった。
目が覚めると、泣いていた。
隣から小さな吐息が聴こえてくる。
「どうした?だいじょうぶか?」
低い声が、暗闇の中で響いている。
さーちゃんの愛した人。
近くにいるだけで感じる温もりに、慣れてしまうくらい触れ合ってしまって、わたしの身体に染みついた匂い。
少しだけ上体を起こして、朝日はわたしの頬に滴る涙を指で優しく拭った。
「うなされてたぞ」
「だいじょうぶ。少し夢を見ていただけ。
宮沢さん、今帰ってきた?」
朝日の匂いと一緒に、外の匂いが僅かに香る。
窓際に視線を移したけれど、空はまだ真っ暗。深夜だろう。