【完】さつきあめ〜2nd〜
「この間は…本当にごめんなさいっていうか…
誕生日おめでとうございました…」
取り合えず涼の言う通り自分の伝えたかった事をシンプルに伝えたつもりだったけど、やっぱり変な日本語になってしまう。
不機嫌な顔。無言のまま、朝日は家へ入れと顎をくいっと上げた。
そして一言言った。
「…今日は、涼が来るっていうだけだったから
さくらと綾も来るなんて聞いてなかったから、だからこんな変な服なんだ…」
そう言ってぷいっと顔を逸らした朝日の耳が僅かに赤かった。
…あぁ、怒っているわけではないんだ。恥ずかしかったのか。
朝日の後を追うように、家の中に入ると、懐かしい匂いが鼻を掠める。
記憶が呼び起こされるようだ。
あの時常に一緒にいたし、この空間で確かに過ごした。それを体がよく覚えている。辛かったし、苦しかったけれど、本当に愛していたし、一緒にいたかった。
朝日の背中を見て、つくづくそう思う。
一緒にいない日が続けばいつか気持ちも薄れて、想い出に出来る日が来る。光の時もそうだった気がする。けれど、全然想い出に出来ない自分がそこにはいた。
「おいおい、綾!涼と付き合ってるなんてどういう事なんだ?!
冗談だろ?!俺は絶対に許さねぇぞ?!」