【完】さつきあめ〜2nd〜

「おう、いいじゃん。使わせてもらうわ」

「宮沢さんならもっといい財布持ってると思うけど…」

「ふん、まあな。でも財布は人から貰うと良いらしい。
本当にありがとうな」

憎まれ口を叩きつつも嬉しそうに微笑んだ朝日にホッとした。
朝日のその顔を見て、やっと安心出来た。
今ならきっと、少しは素直な気持ちを言えるような気がしたんだ。

「宮沢さんは…沢山の人を傷つけてきたと思っているかもしれないですけど…
あたしはそうは思わない。
さくらさんだって…その…今度お店の名前になってるさつきさんだって…きっと幸せだったんだと思います。
あなたはきちんと人を愛せる人だから」

「さくら………」

「だってその証拠に、ゆりさんだってあなたのことを恨んでないじゃない。
それにあたしだって………」

ゆっくりと顔を上げると、朝日と目が合う。
こんな風にお互いにしっかりと見つめあう事が今まであっただろうか。
言葉にしなくては伝わらない想いを、どうして今日の今日まで伝えることが出来なかったのだろうか。

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