【完】さつきあめ〜2nd〜
気づいたら、こんなにも好きになっていた。
あなたを形作る物だけじゃなくて、沢山の時間を一緒に重ねてきて、初めて気づけたこの気持ち。
運命めいた物なんかじゃ全然なかった。ありふれた普通の生活の中にいつの間にかあなたの存在があって
わたしの心を上下に大きく揺さぶって行って、怒りや喜びの感情がそこには沢山あって、それでもあなたが好きで、傷つけられた夜もやっぱり好きな気持ちは変わらなくて

あんなに光を好きだったのに
光への気持ちが変わったように、いつか朝日への気持ちも変わるのかもしれないと思っていた。
けれど、わたしの中の朝日への想いは消えてくれる気配さえないんだ。それどころか、日増しに好きになっていく。
嫌いから始まった好きって、ある意味最強なんじゃないかって思う。
もう底は見えてたのだから、これからは好きな気持ちが溢れ出していくしかないと思うんだ。

ゆっくりと顔を上げようとするけど、いま自分の顔が真っ赤なのが分かるから中々あげられない。
それくらい、わたしは朝日を待たせすぎた気がする。
向き合うまでに時間がかかりすぎだ。

顔を伏せたまま、「何か言ってくださいよ」と言う。

どんな夢物語を願っていた?
俺もだよ、と目の前の人が微笑んでくれる未来を願っていた?
まだ自分を好きでいてくれる自信があった?
応えはノーだ。怖くて怖くて仕方がなかった。
朝日にずっと想ってもらえるほど、素敵な女の子じゃなかったし、光が好きだったと思ってたのに、調子の良い女だと思われてしまうかもしれない。
それ以前に朝日がわたしを好きな気持ちなんて、家を出たあの日に置き去りにしてきたのかもしれないし。

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