【完】さつきあめ〜2nd〜
それでも朝日は沈黙を続けたまんまだった。
ゆっくりと顔を上げて朝日の顔を見た瞬間、驚いた。
口元に右手をあてて、視線を少し横にずらしていた朝日の顔は真っ赤だった。わたしと同じくらい、きっと真っ赤だったと思う。
「宮沢さん?」
ゆっくりと視線をこちらに合わせていく。
目を瞑って、床にはぁーっとため息を吐く。
「こんなに嬉しいのは初めてだ…」
そしてゆっくりとそう呟いた。
「俺は…お前を無理やり抱いて、ずっと傷つけてきたんだと思ってた。
いや、あんなやり方やっぱりどうかしてたんだ。あの時のお前はもうだめだって思った。俺のせいでこいつの人生めちゃくちゃにしちまったって…」
「あれは…確かに許せないですよ…」
「だよなぁ…」
「でも…宮沢さんは気づいてなかったかもしれないけど
あんな事があるずっと前からあたしはあなたの事が好きだったんです…。
あたしずっと光の事が好きだったのに、気がついたらあなたの事が好きになってた…」
朝日はソファーから立ち上がり、ゆっくりと目の前のわたしのところへやってきた。
腕を引っ張られた、と思った瞬間にきつく抱きしめられた。