【完】さつきあめ〜2nd〜
ソファーに押し倒されて
綾乃や涼がいるのも忘れて、わたしたちは再びお互いを求めあった。
あの時何度も体を合わせたはずなのに、初めて抱かれるように、朝日はあの日々以上にわたしを優しく抱いてくれた。

本当に幸せだったと思う。

「さくら、双葉は辞めてくれ」

「それは無理」

「無理じゃねぇよ。もう七色で頑張る必要もないんだって。
俺は本気だぞ。結婚したいなんてこの歳になっても1回も思った事ねぇ。誰と付き合っても、結婚しようなんて考えた事は夢にもない。
そんな俺が、初めて結婚したいと思ったんだ」

朝日の腕の中
それは夢のような言葉。

「けれど、あたしは朝日の夢を1番に応援してあげられる人でいたい。
だから絶対にまだ辞めない」

「ほんっと……お前って頑固な奴だよな」

「…それにゆりさんに負けたくない……。
朝日にとって1番必要である人間だって認められたい…」

ソファーの上、再びわたしを抱きしめて「1番じゃなくたって、1番必要としてる人間だよ」と朝日は言った。
それでもわたしは譲らなかった。
いまにして思えば、素直に朝日の言葉を受け取っていたら良かったのだ。
普通とはちょっと違ったかもしれないけど、好きな人と結婚して、共に暮らして、好きな人の帰りを待つ。
それ以上の幸せを今は見つけられない。

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