【完】さつきあめ〜2nd〜
「…ごめん、綾乃ちゃん…」
「別にさくらに怒ってるわけじゃないのよ!
自分の兄貴のあんな姿見たくなかった!!」
子供のように顔を両手で覆う綾乃が、なんだか可愛らしかった。
いつもはクールで大人びているのに、やっぱり妹なんだと改めて思った。
すぐに顔を上げてじっとわたしを見つめ、綾乃は尋ねた。
「えっと…つまりそういう事なのよね?」
言葉に出すとあまりにも照れくさくて、くすぐったい。
一緒に寝ているのも見られたのももちろん恥ずかしかったし
朝ふたりに見られたら気まずくなる事も分かっていたのに、昨日はそんな事さえ考える余裕がなかった。
ただただ無性に朝日が恋しくて、恋しくて仕方がなかった。
「何か随分遠回りしちゃった…
ただ自分の気持ちを伝えるだけなのにね」
「良かった。
いきなり朝衝撃的な光景を見ちゃったからついつい怒っちゃったけど……
これでも朝日にもさくらにも幸せになって欲しかったんだから」
「ん、ありがとう、綾乃ちゃん…」
「綾乃はなんだかんだ言ってブラコンだからな」
そう割り込んできたのは涼で
キッチンで淹れてくれたコーヒーをふたつ、わたしと綾乃の前へ差し出す。
そして、綾乃の隣に座って、コーヒーに口をつける。