【完】さつきあめ〜2nd〜
音も立てずに現れた朝日に思わず大きな声が出て
目の前にいる涼はますます顔をしかめて、煙草の火を灰皿に押し付ける。
朝日は髪を濡らしたままわたしの隣に座る。
上半身は裸のまんまで、目のやり場に困ってしまう。
大きく足を開いて、少し濡れた腕で、わたしの体を引き寄せる。朝日からは微かにボディソープの匂いがした。

触れられる事にさえまだまだ慣れそうにはない。

涼は「は~~~」と大袈裟にため息をつく振りをした。その横で「ちょっと朝日服くらい着なさいよ」と綾乃が眉をひそめた。

「お兄さまも清い交際を始めたようなんで
俺と綾乃の事は放っておけよな、そんで誰もおっさんの裸とか見たくないから」

「俺はいいけどお前はだめだ!!」

「朝日……いい加減ふたりの事認めなよ…。
まぁ朝日が認めないところでふたりが別れるわけもないんだけどさ…」

「さくらっ!お前まで!
てゆうかお前…朝日って…。
お前は本当に可愛いな」

朝日が顔を近づけて、わたしの頭を撫でる。
こんな上機嫌に笑う朝日は久しぶりに見るし、当たり前のように見つめあうこの時間に照れくさくてたまらない。

「あーあー…。涼、もうあたしたち帰ろうよ。お邪魔みたいだし」

呆れたように綾乃が立ち上がり、涼の無言のまま荷物をまとめだした。
朝日はふたりが帰る寸前まで「早く別れろよ」としつこく言っていた。
その言葉をふたりはもう無視していた。

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