【完】さつきあめ〜2nd〜
そして残された朝日とわたし。
だだっ広い空間の中で、ふたりきりになった瞬間に恥ずかしさとか照れが一気にこみあげてくる。
朝日はただただ優しく微笑んで、ソファーに座ってわたしを見つめる。
だからそんな風に優しく微笑まれると、なんて言っていいか分からなくなる。
この家で過ごした数か月。朝日はずっと辛そうな顔しか見せなかった。けれどわたしが素直に自分の気持ちを伝えたら、朝日はこんな優しい顔をするようになった。

朝日の座る目の前のソファーにちょこんと腰をおろしたら、向き合う朝日が怪訝な顔をした。

「なんだよ」

「え?何が?!」

「何、目の前座ってんだよ!!」

「え?!ダメだった?!」

いきなり不機嫌になった朝日を前に、わたしはソファーから立ち上がり、床の下に座った。

「そうじゃねぇよ!!!」

「はぁ?!」

朝日は無言で自分の座っているソファーをぽんぽんと叩いた。
あぁつまりはそういう事か。
床から立ち上がり、朝日の隣に座る。すると朝日は満足そうに笑みを浮かべる。

「いや、こんな広い部屋でわざわざこんな近くにいなくても…」

「引っ越すか?もっと狭い家ならいっつも近くにいれるな」

朝日はわたしの寝転がってわたしのお腹を抱きしめるようにくっついてくる。
…この人は、本当に寂しがりやで甘えん坊だ。
人の前では強気でも、ふたりきりになるとこんな姿を見せる。
ゆりやさーちゃんが好きになった理由が何となく分かる。

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