【完】さつきあめ〜2nd〜

「まじかよ~…。
じゃあ俺がお前んち泊まろうかな」

「え?!本当に?!うちは朝日の家みたいに豪邸とかじゃないんですけど…」

「知ってる。行った事あるし」

そうだ。
付き合う前涼と3人でよく互いの家に行っていた時来ていた。

「犬小屋かと思ったわ」

…こいつ。

「でもベランダから見える景色が綺麗だし」

「俺んちの方がずっと綺麗だろ」

「もぉ~…うるさいなぁ~…。あそこには沢山想い出があるんだって!」

「ふぅん」

想い出、と言ってしまった後にハッとした。
あそこは光と同じマンションだった。朝日からすれば、光との想い出と勘違いさせてしまったのではないのか。

「必死に働いていた時の想い出とかね!!」

「あっそー」

取り繕っても、朝日の機嫌が少し悪くなるのが分かった。
光に関連するような事を少しでも言えば朝日の機嫌が悪くなるのはいつもの事だった。
小さくため息をついて、車の窓から外を見つめる。
すっかり暗くなった道路を多くの車が行き来する。テールランプに照らされたそれは、少しだけあのベランダから見つめるあの夜景に似ている気がした。

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