【完】さつきあめ〜2nd〜
「…あ、あれは!!あの時は朝日の事全然好きじゃなかったから、ああいうの迷惑だったんだよ!」
「おま、はっきり言うな…。
傷つくわー…」
「でもこれはすっごく嬉しい!ずっと大切にするね!」
ぎゅっと握りしめた胸にはお揃いのキーホルダー。こんなに嬉しいプレゼントなんて、ない。
どんな高価な物より、誰に貰った物より、朝日から貰った朝日とお揃いの物は嬉しかった。
マンションに着いて、久しぶりに自分の部屋の窓を開ける。
ここ最近はずっと朝日の家に行きっぱなしだったから、このマンションに戻るのは久しぶりだ。
ベランダに出ると、その後を追うように朝日がやってきて、煙草に火をつける。
朝日の家から見る街並みはもっと綺麗。もっと遠くまで街の隅々を見渡せる。けれど相変わらず、わたしはこのマンションから見るネオンの光りの方がずっと好きだった。
わたしや皆が働く、大きく見えて、実は小ぢんまりとした街並み。
朝日のマンションからじゃあ、この街が小さく見えてしまう。
隣にいた朝日は煙草を咥えながら、柵に寄りかかり大きく伸びをする。
「小さな街だ」
「こうやって見るとちっぽけだよね。沢山の人の人生があの街にあるなんて想像出来ないくらい」
「たまに考えるよ。こんなところで俺は何をやってるんだろうなーって…」
「なにそれ、変なの。だって七色は朝日の夢でしょう?」
「別に夢とかじゃなかった気がする。
俺は中学しか出てないし、夢も何もなくて、ただ自分の親父より大きな物作ってやるーって気持ちが大きかった気がする」