【完】さつきあめ〜2nd〜
「お父さん?」

「あぁ、光と綾の父親でもあるけどな。
あの人よりでかい会社を作って、あの人より金儲けをして、そしたらあの人を見返せるような気がしてたんだ。
まぁ、なんせあの人が持ってる会社は光に継がせたかっただろうしな。はなからそんなもん欲しがってねぇけど」

「…朝日」

家族の事を話す朝日は、いつだって切なそうだった。

「俺は力を持って、あの人の持ってるもの全部壊したかったんだろうな」

「だって…お父さんだよ?」

「俺の母親を捨てた、父親な……」

「それは…きっと理由があったんだよ」

「どんな理由があろうとやってる事は変わらないよ。
あの人にとって俺は想定外って奴だったんだろうな。
引き取ってはもらったけど、想像してた父親とは全然違ったし」

乾いた笑いを浮かべたけれど、顔は全然笑ってなかった。
また、朝日の片隅に癒す事の出来ない傷を見ているようで。

「どんな人だったの?」

「光や綾の母親と金や仕事の為に結婚したような計算高い男だよ。
つっても殆ど俺とは話もした事ねぇし、かといって光や綾を可愛がっていた記憶はねぇけど。
なんだかんだ自分の事しか考えてないような人だよ。

でも自分も大人になって、結局大人っていうのは自分の事しか考えれないような人間ばっかだってのは分かったけど
それにわざわざ夜の仕事を選んだってのも母親のせいもあるのかもしれない。
結局この仕事を選んでみたって、周りの人間は金とかさ、自分の欲望ばっかりな世界で、いい加減うんざりもしちゃうんだけど。俺も俺でそういう人間には変わりないから、そういう人間が集まってきちまうのかなーって思う」

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