【完】さつきあめ〜2nd〜
柔らかい瞳をして、わたしの頭を撫でる朝日はやっぱり寂しそうだった。
「でもお前は全然出会った頃と変わらないなぁ」
「そう?」
「あぁ、結局付き合う事になっても生意気なところも変わらないし」
「なっ!!」
「あはは。気の強いところも、真っ直ぐなところも
人に優しいところも、全然変わらない。
こんな場所にいて全然変わらないお前を不思議に思うよ。
人間ってのは金や名誉を持てば普通は変わっていくもんなんだよ」
「あたしは朝日が思ってるほどいい子でもないよ…」
自分の中に黒い感情が沢山あるのを知ってる。
いつだって誰にだって優しくも出来ないし、全然真っ直ぐじゃないし、人を僻んだり、嫉妬したりする気持ちだってある。
わたしだって、普通の女の子と変わらないよ。
「俺の前には、お前以上の女は今後現れそうにもないな」
きっぱりとそう言い切ってくれた朝日の気持ちは嬉しかった。
水が流れていくようにスーッと人の気持ちさえ変わっていくようなこの世界で、変わらないものもあるって錯覚させてくれるような言葉だった。
「それは今だからそう思う事だよ。
それにさくらさんが生きていたら、朝日の気持ちだって今と全然違っていたかもしれないし」