【完】さつきあめ〜2nd〜
「いや~、ママがいい子紹介してくれたお陰で、双葉も盛り上がってきたなぁ」
久保はしみじみとそう言った。
「さくらちゃんをご贔屓にしてくださって本当にありがとうございます」
「さくらちゃんは本当に聡明だから、僕の会社に欲しいくらいでね」
「そんな……」
「あら、うちにとっても大切な女の子ですからね。そう簡単にあげたりできないわよ。
さくらちゃんがいなくなったらうちに華がなくなっちゃう。
それに久保さんの会社は綺麗な子ばかりじゃないですか」
「あはは、ママには参ったね。
うちは才色兼備揃いだからね」
「ふふ、存してます。うちにも何度か連れてきてくれた事がありますけど、有名大学を卒業した子ばかりなんでしょ?
あたしなんて中卒だから、羨ましくもあるけどね」
「いやいや、こんな大きなお店を任されて守っている君も立派な人だったよ。
ところでさくらちゃんは大学には行ってないんだよね?」
「えぇ。高校を卒業して上京をしてきたものですから。
って、実は大学受験して受かってはいたんですけどね」
「え?さくらちゃん、そうなの?初耳」
「ほとんど話した事がありませんでしたから」
そうなのだ。
わたしは上京する前とある東京の大学を受けていた。
そして合格もしていた。
その話は小笠原にはちらっとした事があるけど、あまり人に話した事はなかった。
その大学名を口にすると、久保も由真も驚いたように目を見開いた。
初めて小笠原に話した時、彼も同じような反応をしていたような気がする。