【完】さつきあめ〜2nd〜
そんな話をしているうちに沢村がわたしを呼びにきて、卓から抜かれる。
周年という事もあり賑わう店内。指名は何組も被っていた。
わたしの少し前を歩く沢村が、ぽつりとこぼした。
「疲れましたねぇ」
その言葉に思わず笑ってしまう。
「意外です!沢村さんの口から疲れたなんて言葉が出てくるなんて」
そう言えば、少しだけ口元を緩めながら沢村が振り返った。
「えぇ?!僕だって人間だから疲れたりもしますよ!
まぁ、さくらさんたちやキャストの皆の方がよっぽど疲れてると思いますけどね」
「そんな事ありませんよ。あたしたちキャストが気持ちよく働けてるのは沢村さんたちの助けがあってなんですから」
「ありがたい言葉ですよ。
それにしてもさくらさんはやっぱりすごいですね~!
うちは何だかんだ言ってずっと由真ママの力が大きいお店だったんですけど、君がナンバー1でお店の顔でいると、その場がシャキッとしまるような感じがする」
「そんな事ないですって~!
あたしはONEのゆりさんみたいに圧倒的なナンバー1でもないし」
「昔THREEで働いてた美優さんが言ってましたよ。
さくらさんがナンバー1の店は働きやすいって」
「美優ちゃんが?」
「えぇ。さくらさんがとても好きだって。
さくらさんはあんまりリーダー格って感じでもないし、自ら進んで皆を引っ張っていくようなタイプではないけど
見てる周りが応援したくなる気持ちは僕にもよぉ~く分かります」
「もぉ、沢村さん、褒めすぎですって!」
「由真ママも言ってたんですけど、さくらさんは双葉にいるのは実はもったいないんじゃないかって。
さくらさん自身も年明けに開く新店に行きたいんじゃないかって」
沢村のその言葉に、ドキリとした。
まるで思っていた事がお見通しだったようで。