【完】さつきあめ〜2nd〜
「さぁね。あいつの考えてる事なんて分かんねぇよ。
ただ女の趣味がクソ悪ぃ事だけは分かる。
まぁ由真みたいな悪魔みたいな女には、沢村みたいな純粋で真面目な奴の方が似合ってるのかもしれないけどな」
「悪魔って………。
由真さんの事好きになるの分かるけどね。ママとしてあの人は立派な人だと思うよ。
双葉が女の子同士仲がいいのは由真さんあっての事でしょ?」
「さくらは由真が現役の頃を知らないからな。
まぁあいつも随分丸くなったとは思うけど、あいつがキャストとして働いてる時は由真が怖いって何人も辞めていったし、いじめだってしてただろ。
俺たち男にも容赦なく気が強ぇ女だとは思ってたけど、ああなるとは思わなかった。人間って成長するもんだ」
「まぁ…由真さんが現役の頃の話は小笠原さんから沢山聞いてる……。
そりゃーこういう世界だし、ナンバー1はお店の顔だからね
多少我儘になったり、強情なのは分かる」
「でもお前はナンバー1でも優しいじゃん」
朝日の言葉に、はぁ~っとため息が出る。
その様子を見て、朝日は首を傾げる。
「あたしは優しいんじゃないんだと思う。
争いがただ嫌いなだけだよ。
それってある意味…勝負に行かないで無難な道を選んでいる気がする…」
わたしがそう言うと、朝日はわたしの頭を撫でて「お前はそれでいいんだよ」と言った。
その言葉に押し黙る。
七色グループに入って、ずっとゆりに勝てなかった。
それは、勝つ気が実はなかったのではないのか、と。
色々な事を言い訳にして、実は傍観者でいる事を望んでいたのではないかと。
少なくともゆりは、わたしとは違う。
どんな状況であっても、それがたとえ周りから批判されたとしても、あの人は自分の意思を曲げた事のない人だと思った。だからずっと七色グループで1番でいられるのだ。