【完】さつきあめ〜2nd〜
「雪菜はずっと長く付き合ってる彼氏がいて、それほどこの仕事に賭けてるって感じもしねぇんだよな。
それにゆりが雪菜を毛嫌いしてる」

「ゆりさんが?それが派閥って事?」

「沢村話過ぎな。
まぁさくらの言う通り、ONEはいま系列の中で1番キャストが多いし、それだけ派閥つーかグループみてぇなもんがある。
雪菜は別にゆりを嫌っちゃいないんだけど、ONEはゆりの取り巻きと雪菜を慕うキャストで真っ二つに分かれているみてぇなもんでな。
ちょっとゆりの取り巻きには困ったところがあるんだよな」

「そんなに酷いの?」

「さくらが足を踏み入れるような場所でないよ」

朝日がそう言った意図の中には、わたしがその場所に入ったらいじめられるのが分かっているんだ。
それでもこの頃から、わたしはその場所へ足へ踏み入れてみたい気持ちがあった。
シーズンズから始まって、人に助けられ続けた。それは甘えがあるという環境だという事。

「女の欲望が渦巻いてる場所って感じで。
ゆりが悪いってわけじゃなくて、ゆりを取り巻く奴らは陰湿だな。

でもそれより問題なのは、その事に対しての雪菜だと思ってる。
雪菜はある意味大人で、争いを好まないからスルーしてるって感じだけど、お店側からしてみたら頼りなく見えるわけよ?」

「頼りなく?」

「雪菜はゆりより若い。
この仕事の才能だってゆりよりあるかもしれない。
けれど争おうとしないんだよ。俺たちは仕事でここにいて、別に仲良しごっこをしてるわけじゃないから、結局争いあうところに金が産まれるのも知ってる。
だから雪菜にはゆりに歯向かうような負けん気が欲しかったんだけどな。まぁそういう子じゃないから、結局ゆりがずっと1番なわけ」

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