【完】さつきあめ〜2nd〜

「それって仕事上では朝日の役に立たないって事だよね」

「…役に立たないって事じゃねぇけど…
雪菜とゆりが競いあえば、もっとONEの売り上げが伸びていた事は事実だな」

その話を聞いて、やっぱりこの人はこの世界に生きている人なんだと思った。
女の子をちゃんと商品として見てるし、厳しい人だって事も分かる。

「それじゃああたしも…朝日にとっては役に立たない女だよ」

そう言ったら朝日は悲しい顔をした。

「さくらは……そんな事を考える必要はないんだよ。
俺はお前の優しいところや、人と争えないようなところも好きだし
何よりも別にこの仕事をしてて欲しいとも思ってない。
俺はお前をお店の女とは見てねぇし、お前を金だとは思ってない。
お前はただそこに生きていて、俺の側にいてくれれば十分なんだ」

ひとりの人間として必要とされている事、どれだけ幸せな事だったんだろう。
けれど、その朝日の想いとわたしの想いのほんの少しの相違が、のちに歪を引き起こす事となる。

10月になって周年も終わって
忙しかったお店も少し落ち着いて、いつの間にか双葉に務めて半年以上過ぎて、時の速さを感じる事になる。
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