【完】さつきあめ〜2nd〜

「ごめんなさい。何かバタバタしちゃって」

「いや忙しいのは良い事だよ」

シーズンズからもう付き合いも長くなった。
小笠原は飽きる事もなくわたしを指名してくれて、毎週必ず同伴をしてくれる事も変わらなかった。
それでも出会った頃から全然変わらない。そう本人に伝えると「それは君もだよ」と笑いながら返された。
元々小笠原とは共通の趣味もあって、話もよく合った。お客さんの中で、自分が1番自分らしくいられる人でもあった。

「VIPも空いてなくてすいません!」

「いえいえ、全然構わないよ。お店が盛況していて何よりだ」

「そう言ってもらえると嬉しいです!」

「さっき君が着いていた席だけど……」

「え?」

「三浦さんだよね」

「知ってるんですか?!」

小笠原のところの前に着いていた指名の席。
そこは双葉で知り合った三浦という男の席だった。

「メディア関係の社長さんだよね」

「え?!そうなんですか?!全然知らない!
あたしも最近知り合ったばっかりで指名してもらってますから。職業の事も全然聞いてないので知らないんです。
小笠原さんはやっぱり顔が広いなーー」

「いや、すごい有名な人だよ」

話を聞くと、わたしでも知っている今旬なアイドルグループの運営をしている会社の社長らしくて
見た目からも普通の会社員ではないなと思っていたけど、そんなすごい人だとは想像もしなかった。

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