【完】さつきあめ〜2nd〜
「ONEではゆりを指名しててよく見ていたから。
でも最近見なかったかも」
ゆりを指名している。
やっぱりその事実には拘ってしまう。
どこまでもゆりの後を追っている自分がいる。
三浦は最近双葉がお気に入りで、わたしの店にしかほぼ来ていないと口にしていた。
どこまで本当の話かは分からないけど、ゆりと同じお客さんを持っているのならば、自分の方が良いと認められたかった。
それは勿論小笠原にも
けれど、それを本人に聞いてみる事は絶対にしなかった。自信がなかったし、小笠原は人と人とを比べるような人ではなかったから。
「それより美月ちゃんだいじょうぶかな?」
「美月ちゃん?」
わたしが他の指名を回っている間、小笠原のヘルプに美月がついてくれていた。
すっかり毒が抜けたように指名に拘らなくなった美月は、最近ではずっとヘルプの席でも文句のひとつも言わずに、大人しくしていた。
「なんか具合い悪そうだったよ?」
「本当ですか?!後で様子見てみますね……」
「お酒は飲んでなかったみたいだけど」
すっかり大人しくなってしまった美月。
あれ以来忙しくてあまり話をする時間も持てていなかったけど、もしかしたらわたしと朝日の関係も知っているのかもしれない。
それでも彼女はわたしを敵対視する事もなくなっていたし、挨拶程度しか話はしていなかった。