【完】さつきあめ〜2nd〜
さくら、と名前を呼ぶ声が聞こえたけれど、わたしはそのままマンションを飛び出していった。
朝日は追いかけてはこなかった。
外に出ると、大雨が降っていた。
薄暗い空を睨みつけて、傘も持たないまま雨に濡れていた。
まるであの日と同じだった。
悲しい、寂しい、苦しい、悔しい、許さない。
言葉にならない気持ちを、朝日へぶつけていたあの日と同じ。
けれど、わたしは朝日への愛を知ってしまった。
「はぁ…はぁ…」
マンションから出て、大雨の中、どれだけ走り続けただろう。
携帯と、キーケースから離された鍵だけ手にもって、暫く走り続けた後、息が上手く吸えなくなって、涙が止まらない。
この息苦しさは、朝日へと気持ちを伝えずに、一緒に暮らしていた頃と同じもの。
涙で目の前がよく見えない。
地面を強く打つ雨。
膝をついて、声にならない声で叫んでいた。
「何でよ…
何でよーー!!」