【完】さつきあめ〜2nd〜
「夜になると、窓からみおろす夜景がすっごく綺麗なんだよ。
けど、あのマンションで見た、あの小さな夜景は何か特別なんだよ」
「あたしもかも……。
何か大きくなればなるほど、見えなくなってしまう物もあるんだよね」
「ずっと兄貴より大きくなりたいって思ってたのになぁ。
同じ物を手に入れても、同じ景色が見える訳じゃないって事は分かったよ。
それどころか、大きすぎる物は俺じゃあ持て余してしまうみたいだ」
「光だけじゃないよ。きっと皆そうかも」
向き合って座るソファーで、改めて光の顔を見て、朝日にやっぱり似てると思った。
けれど同じような大きな家に住んで、同じような地位を手に入れても、光は光だし、朝日は朝日だ。
ふたりは、お互いを比べすぎている。
どっちが上とか、どちらが良いか、なんてそんな物なかったのにね。
「兄貴と何かあった?」
兄貴、と言われて、胸が痛くなった。
「夕陽?」
胸に手をあてると、ばくんばくんと心臓が忙しなく動くのが分かった。
息が苦しくなって、その様子に気づいた光は、慌ててわたしの方へ駆け寄ってきて、背中をさすった。
「無理して話さなくていいよ。ごめん……」