【完】さつきあめ〜2nd〜
甘えたくないのに。
朝日と同じ、熱い体温を持つこの人にだけは甘えたらだめなのに。
けれど、いくら忘れたくたって思い出してしまう。
美月が妊娠した事。朝日の子供かもしれない事。
朝日が美月を見捨てられない事情がある事。
「っう………」
思わず涙が零れ落ちたら、光はわたしを自分の胸へ引き寄せて、抱きしめた。
久しぶりの光の匂い。懐かしい思い出がこみあげてくる。
「昨日夕陽から連絡があって本当に嬉しかったよ」
「光……仕事は?」
「仕事なんて、夕陽の方が俺にはずっと大切だから」
「光は………やっぱ王子様だね…」
そう言うと、光は更にわたしを自分の胸の方へぐっと引き寄せて、顔を覗かせて優しく笑った。
「夕陽に王子様って言われるのとか、周りからそう言われるの実は嫌いだったんだ。
俺に無いものってなんなのかなって考えると、俺って完璧すぎるのかなぁ~って」
「あはは、自分で言う?」
「完璧すぎても、選ばれない事もあるのは事実でさ。
でも俺っていう人間は、自分が相手の思ってるイメージにならなきゃっていうのが小さい頃から身についていてさ。
いつの間にか、自分はそうあらなければいけないって……
でも、そういう自分も自分自身なんだって気づいて
そしたら何か悪くないじゃん?王子様でも。
俺は夕陽にとって夕陽が望むなら王子様にでもなりたいって思ったよ」