【完】さつきあめ〜2nd〜
どうして、そんなに優しい瞳で見つめるの?
わたしは、都合の良い時だけ光に頼るような調子の良い女だよ。
それが光も朝日も傷つけるのを知っていて。
抱き寄せられた胸に顔をうずくまって、涙を見られないようにした。
「あたしも光みたいに自分の事ばかりじゃなくて、人の事をちゃんと考えてあげられる人間になりたいよ……」
「俺の知ってる夕陽は誰にでも優しい人間だけど?」
「違うよ…。
ただの優しいってのは人の事ちゃんと考えてあげられる人間とは全然違うから。
本当に優しい人っていうのは光みたいに誰かのために自分を犠牲に出来たり、時には人に厳しく出来る人の事だよ。
あたしの優しさっていうのは結局人と争うのが嫌で、逃げてるだけなんだ……」
「そうやって自分を客観的に見てるところも好きなところのひとつだけど。
それに争いが嫌いってのはいいところだよ。
夕陽は周りをよく見て、どうやったら周りの空気がよくなるか考えて行動してるだけだろ。
それって自分じゃない誰かの為だろ?」
「ふ……っ。光ってやっぱり王子様だね。
あたしの悪いところも良いところに変えてくれるんだから」
「夕陽はやっぱり少し勘違いしてるよ。
俺って優しいけど、人によってはその優しさは残酷だって言われる。
でも夕陽はやっぱり俺にとって特別だから、普通仕事中抜けだして女に会いに行くようなオーナーはいねぇよ」
苦笑交じりに光は言った。
びっくりして顔を上げて光を見上げる。