【完】さつきあめ〜2nd〜
「そんな事、俺だって分かってるよ。
…さくらはどうしたい?俺にどうしてほしい?」
朝日がわたしに尋ねてくる。
どうしてほしいかをわたしに聞くなんて残酷だよ。
どうしてほしいかなんて、答えは決まってるのに。
でもそんな答え、口に出して嫌な人間になんてなりたくないのに。
でもいくら考えたって、どれだけ周りの事を考えたって、結局たどり着くのは自分の幸せだけで
わたしは周りの幸せを願えるほど、出来てる人間でもないんだよ。
「あたしは……
朝日と一緒にいたい。けど美月が子供を産むのは嫌だ。朝日の子供かもしれない子を産むのなんて受け入れられない…」
朝日から大きなため息が漏れるのが分かった。
わたしは元々そういう人間だった。いつか朝日わたしを優しい奴だって言ったよね。でも本当は全然優しくなんかないんだ。
小さな命さえわたしを脅かすものでしかなくて、ひとりきり孤独に怯える美月の事だって考えられなかった。光や朝日みたいに、周りの事を考えてあげられる人間なんかじゃないんだよ。
「俺は、どうしても美月を見捨てる事が出来ない」
それはきっと、捨てられたお母さんを重ねているから。
それに、簡単に人を切り捨てたり出来ない朝日が、本当に好きなのに
止まったかと思った涙が、もう一度溢れ出す。
差し伸べてきた手をもう1回思いっきり振り払う。
何度朝日を傷つければ気が済むのだろう。差し出した手を拒む事が、1番朝日を傷つけると知っていて。