【完】さつきあめ〜2nd〜
「後悔なんて、してないよ」
そんな嘘もお見通しだったのだろうけど。
色々な物を客観的に見てきて、周りの事ばかり考えてる人だって知ってたから。
重なっていた手がほどかれて、両手でわたしを抱きしめる。
抱きしめた先から感じる熱。力強かった瞳。
似ている所は沢山あるのに、小さな息遣いひとつひとつが、抱きしめる手の先の繊細さも、やっぱり同じ所なんてひとつもなくて、別々の人間なんだなって思い知らされる。だから、朝日の事を、光に似てるから好きだなんて思った事は一度もなかったんだと改めて思い知らされた。
「夕陽の気持ちが別のところにあったとしても、俺はすごく嬉しいんだ」
「うん………」
悲しくて辛くて、絶望感しかなかった。
光はわたしの弱さにつけこんだ、と言っていたけれど
光を利用したのは紛れもなくこの自分だ。
光に抱かれた。
自分で望んで抱かれた。
どこにも行き場のなかった拠り所を、1番求めてはいけない人に求めてしまった。
朝日の所にはもう戻れない。それでもわたしの気持ちがここになくても、それでも必要としてくれている空間は何て居心地がいいのだろう。
本当は駄目な自分を肯定してくれる場所っていうのは、こんなにも居心地がいいのだ。
この一夜を死ぬほど後悔する日が来るとしても、いまのわたしには必要な場所だったんだ。