【完】さつきあめ〜2nd〜
「やっぱりそうやって素直に思える夕陽ってすごいって思うよ」
「…………でも、あたし、仕事は辞めようかな」
「え?!」
わたしの言葉に、光は思った以上に大きな声を出した。
そして驚いた顔をしたまま、わたしの顔を覗き込んだんだ。
辞めたくなるほど辛い事は何度もあった。大好きな人に辞めてくれとせがまれた事だってあった。けれどどんな時だって絶対に辞めるなんて本気で思った事はなかったし、わたしにはまだこの場所でやるべき事があるのだと思っていた。
けれど、いまのわたしはもうその指針さえ見失ってしまった。
七色グループにいたのは、朝日を助けたかったから。いつからか思い芽生え始めた感情。
けれどもうわたしは朝日に必要とされていない。七色グループにとどまる必要もない。この仕事を続けていく理由もない。
目標も指針も愛しかった人もすべて失ってしまったんだ。
「それって俺、期待していいのかな?」
「期待?」
「夕陽が望むなら、俺のところにいてもいいんだよ」
「あぁ。光のところで働くのもいいかな…EDENとか。南さんもすごく優しくなったし働きやすいかも。
なんていっても光のお店だしね!
それとも新しく立ち上げる新店に行こうか?あたし光が知ってる頃よりずっとお客さんも多くなったし、役に立つ女になったと思うよ」
「いや、そういう意味じゃなくて。
俺は別にもう夕陽をお店の女の子として利用したいとかって気持ちはマジでないんだ。
むしろ家にいて俺の帰りを待っててくれるだけで満足っていうか……」
「それは………」