【完】さつきあめ〜2nd〜
「じゃあ送るよ。それに迎えにも行く」
「そんなのいいよ!!」
「別に俺の家に帰ってこいなんて言ってねぇから。ただ送り迎えしたいだけ」
そんな光の言葉に思わずふっと笑みがこぼれてしまった。
自分にはそんな資格ない。そんな事は承知で、それでもわたしの居心地の良い言葉を選んでくれる。やっぱり光は出会った頃に感じたように王子様で、何も変わりやしないんだ。
ふわりふわりと自分じゃなくなっていく感覚。けれど、意思なんて持たない方がずっと幸せだったのかな?
このまま流されるように身を預けて、自分の意思なんて関係なく光の言う通りにすればいいだけ。
愛してくれる人を愛すればいいだけ。
この時信じられないくらい自分がなくなっていって
恥ずかしい話、身体さえ繋がっていればいつか心も繋がっていくものだと思っていた。
そして、そうでありたかった。そうであれば自分が楽になれると本気で信じていたから。
光がわたしをみおろして、相も変わらず優しい瞳で頭を軽く小突く。
こうやって光に優しくされるたびに、あの頃少しずつ光を好きになっていった。
「そんな強がんなくたっていいじゃんか。
誰だって辛い時はひとりでいたくないし、誰かに甘えたくなるもんだろ?
いいじゃん。近くにいて、甘えさせてくれる人がいるならそれに甘えたってばちは当たんないんじゃない?」