【完】さつきあめ〜2nd〜
ここに立つ意味を改めて考える。
もう…無理しなくてもいいんじゃないか。ゆりに勝つためとかじゃなくて、七色を守りたいとかじゃなくて
ただ目の前で、わたしに会いに来るお客さんに接客するだけ。売り上げとかナンバーじゃなくてただ日々を淡々とこなしていけばいいんじゃないかって。
「さくらさんのお陰ですね」
明るい笑顔を向けて、沢村がそう言った。
「え?」
沢村の顔を見ると、優し気な黒い瞳を僅かに揺らして、微笑んだ。
「さくらさんがゆりさんに勝ちたいとか無理ですなんて言っちゃったけど
君や由真ママは出来ない事なんかないって言って……。
僕はどうしても性格上冷静に物事を見てしまうから、すぐ目の前の数字にとらわれて頭で計算してしまうんだけど
さくらさんを見ていると、そんな夢もいつの日にか叶ってしまうんじゃないかって思わされてしまう」
「や、あれはあたしだって本気で…
いや本気なんですけど」
「なんていうか、さくらさんだけじゃなくて誰にでもゆりさんを超えようって気持ちがあるのなら、超えられるんじゃないかって
それをさくらさんを見ていて思いました。
さくらさんはお店自体の雰囲気をパっと明るくしてくれるから、もしかしたら双葉にいるよりもゆりさんと同じ店で働く方が結果を出せる人なんじゃないかなって」
「ゆりさんと?」
「えぇ、君はとても強い人だと思うから直接ライバルと同じ店にいる方が伸びるんじゃないかってね。
なんて僕の考えですから、僕としては双葉にずっといて双葉って店を盛り上げていってほしいって考えてますよ!」
「沢村さん……」