【完】さつきあめ〜2nd〜
その日営業を終えて、光から連絡が入っていて
光はお店から少し離れた場所まで迎えに来てくれていた。約束した通り。
「お疲れ!
つぅか酒臭っ!!」
「そりゃーお酒飲んでれば酒臭くもなりますよ~ん…」
素面だったらどんな顔をして光に会えばいいか分からなかった。
七色にいる事も、働く事も、キャバ嬢でいる事も、何の為にしているか考えたくなくて
けれど、近くにある優しさに甘えて嫌な事をほんのひと時でも忘れられたら
「あんまり飲みすぎないようにね。体に良くないよ…。
またあんな風になったら心配だし」
あんな風に。
それはわたしが過呼吸になったり、パニックになったりという事をさしているのだと思う。
車のシートに体を埋めて、窓から見えるネオンに視線を移す。
「だいじょうぶだよ。光とだけいる時はあんな風になったりしない」
あんな風に自分が分からなくなるほど自分を見失うなんて、考えてみたら朝日に関係してる時だけだ。こんなに感情が激しく激情するのなんて、朝日と一緒にいる時だけなのだから、本当は朝日とは相性が良くないのかもしれない。
「夕陽が感情的になるのなんて、あの人といる時だけだもんね」
「そんな事ないよ……
それにそれっていい事じゃないし」
「そこまで深く想ってもらえるあの人が少し羨ましいよ」
「そんなんじゃないよ!!」
光の言葉に、少し強く返してしまった。
言った後にすぐに後悔してしまう。