【完】さつきあめ〜2nd〜
何も答えを出せないまま
無情にも時は流れていくばかりで、悪戯に流れる時間の中で冬は少しずつ近づいてきていて
年明けには、光の、そして朝日の新店がオープンする予定…だった。

週の半分は光に会っていた。光に会って、光に抱かれて
それでもわたしと光の関係に名前をつける事は出来なかった。セフレ?これじゃあまるで寂しさから光を利用してるみたいだったけれど、光はそんなわたしを受け入れてくれた。
そんな弱さを笑いはしなかった。

そんな関係になっても、光とは仕事の話を余りしなかった。
だから光の新しく出す新店の事は何も知らないし、光から話そうともしなかったし、こちらから何かを聞き出す事もしなかった。

分かってるのは朝日の新店の事。
子供みたいに目を輝かせて、この街で1番のお店を作りたいって言った朝日の顔だけ。
皐月という名前の、大好きだった人の、想いがつまったお店。

「おはよ、早いな」

「おはよう、光。
いま営業中!」

眠そうに寝室から出てきた光は目を擦りながら、肩越しから携帯を覗きこむ。

「ライン?本当に営業熱心だな」

「うん。午前中はラインで連絡とって、出来るなら空いてる時間聞いて電話するようにしてるんだ。
結構電話ってハードル高いけど、由真さんは直接お客さんの声を聞いて営業した方がいいって言うから」

「やっぱり夕陽は変わったな」

「変わった?」


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