【完】さつきあめ〜2nd〜

ふとした瞬間に無。
どんなに忘れようとしても、どんなに考えないようにしても、深く深く、自分の中に刻み込まれているのが分かる。
許せなくても憎んでいても、もうわたしの心をあれほど揺さぶる事が出来るのは

「あー…やめやめ」

同伴前、久しぶりに昼間の街に出て洋服を手に取って鏡に合わせて見ても
全然目の前と違う事を思い浮かべる自分をかき消した。

街はいつの間にかクリスマス色に染まっていて、心なしかすれ違う人たち皆が幸せそうに見えた。
水色に染まる空を見上げて、大きく深呼吸すると冬の匂いが鼻を掠めていった。
壁に寄りかかってミルクティーを飲みながらぼんやりと行きかう人々の群れを見つめていた、時だった。

「すいません、いまちょっと時間ありますか?」

「……」

「何だよ、その顔…」

ナンパかスカウトか、そう思って声を掛けてきた男に思いっきり嫌な顔をして振り返った。
けどその先にいたのは、涼だった。
目が合うと意地悪そうな笑顔を向けた、涼だった。

「なんだよー!涼かよ!!」

「何か良い女がむすっとした顔で突っ立てるなって思ったらさくらだった」

「もぉ~!何がいまちょっと時間ありますか~?だよ!!」

「いや、声掛けられるの待ってるんかな~って思って。
つぅか久しぶりだな!元気か?」

「まぁね、ちょっと同伴前に時間があったから洋服見てた」

「最近全然トリガーにも顔出さないじゃん。
綾が誘っても断られるって言ってたよ」

「あ、ごめん…。
最近仕事が忙しくて…」

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