【完】さつきあめ〜2nd〜
いま、本当に笑えている?
その言葉に、自分の中でずっと張りつめていた気持ちが溢れ出していくようだった。
いつだって厳しさの中に優しさのある言葉で、心の奥まで見透かされそう。
光は、こんなわたしといて、幸せだったのだろうか。
心のどこかで気づいていた。もう出会った頃には戻れない事も。
立ち止まっていても足踏みをしても走り抜けていっても時は平等に流れていって
より一層冷え込む日が続いて12月は足早に過ぎていく。気持ちだけを置き去りにしたまま。
前に進む事も、立ち止まる事も出来ない中で進む道も決められぬまま、けれど確実に運命は動き出してしまっていたんだ。
皐月がとあるビルにオープンをする、そう風の噂で聞いた。
けれどそれと同時に信じられない事件が起こってしまうのだ。
「おはよーございまーす」
年末も近づいてきたからお店も活気づいてきて、同伴も連日のように続いていた。
今日も同伴が入っていたのでセットを先に済ませて、時間が僅かに空いたので双葉で休もうとお店に立ち寄った。
いつもこの時間なら黒服が何人かお店に集まっている時間だったけれど、今日の双葉の雰囲気は妙だった。
いつもならこの時間に来ていない由真と沢村がお店に来ていた。
由真にいたってはいつも着物を着ているのに着替えもせずに、心なしかお店も落ち着きのない雰囲気に包まれているように感じた。
わたしを見つけ、由真が慌てたように駆け寄ってきた。
「おはよう!さくらちゃん!」
「由真さん、おはようございます!…何かあったんですか?」
「うん…ちょっと、まぁ…。
それよりさくらちゃん今日同伴だったわよね?」