【完】さつきあめ〜2nd〜

「まさか………」

「さくらちゃん、有明と連絡は…取ってるわよね…?」

「まさか……そんな事…あるはずないよ……。
あたし、光に連絡取ってみます!」

「さくらちゃん!!!」

由真の引き止める声がお店に響いた。
それでもわたしは携帯片手に走り出していた。

クリスマス色に染まる街中で、出勤前のキャバ嬢や仕事帰りのサラリーマンが行きかっていた。
そんな人混みも気にせずに、携帯を手に取り、走り出した。
無機質な音を刻み続ける画面越し。その音を耳に感じたまま、色々な想いが脳裏をかすめる。

とっくに知っていたかもしれない。
それを知りながら、彼は一体何を思っていたのだろう。どうして、いつもひとりで全てを背負いこもうとするのだろう。
光が七色グループを辞めた時だってそうだ。どこにその想いをぶつけるというのだろう。
何故光と朝日は傷つけあわずにしか互いの存在を認めてあげる事が出来なかったのか。
…どうしてゆりは、いつからそんな事を思っていたのだろう。強い人だと思っていた。誰にも負けないくらいに強い想いがある人だと思ってた。
けれどあなたが出した答えが、朝日への本当の想いだったというの?それじゃあ朝日があんまりだ。

光は電話に出ない。
思わずやってきた場所は、EDENの入っているビルだった。
足を踏み入れた事は1度もない。入っているビルさえ避けていたところがあったし、まさかここに来るなんて思いもしなかった。どうしても光の口から聞きたくて、そんな時はなりふりも構ってはいられなかった。
エレベーターに乗って、EDENの看板の前で足を止める。
一瞬止めたけど、止めたら入れなくなるのは分かっていたから勢いで真っ黒の扉を開ける。


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