【完】さつきあめ〜2nd〜
散りばめられたシャンデリアが眩い光を放つ。
すぐに店内にいた黒服がわたしに気づき、こちらへやってきた。
「あのー……お店はまだやってないんですけど…」
営業時間外、しかも私服を着た女の子。その黒服は訝し気にこちらをじろりと見つめた。
「有明さんはいらっしゃいますか?」
「オーナーなら事務所にいらっしゃると思いますけど…」
「今すぐに会いたいんですけどっ!」
「いやあ、そうは言われましても…」
「いいから!光に会わせてよ!」
自分でもめちゃくちゃを言っていた、とは思う。
声を荒げて光に会わせろという水商売風の女ははたから見れば、光につきまとう痛い女にも思えただろう。
「だから、困りますって!」
黒服が店内からわたしを追い出そうとした、その時だった。
「あら、さくらちゃんじゃない」
聞き間違えるはずもない。
鈴のように聞き心地が良くて、よく通る高い声音。
大きくて、手に届かなくて、その存在がいつだって目の前にあって…そこを目指してずっと歩き続けてきた。
頭の先から、足の先まで完璧な人。
でも完全な強さを持っている人なんて、この世にはいない。完璧な人だと思っていた。今日まではずっと。